夢のつばさ 〜Fate of Heart〜

【対応機種:ドリームキャスト ジャンル:アドベンチャー 発売元:KID】

 ストーリーや設定を考えると『?』と思う部分はありますが、なぜプレイステーション版もドリームキャスト版も結構遊んでいるか考えてみると『作品世界の構築』については完成度が高いからだと思います。絵柄の魅力もあるでしょうが。

本サイトでは株式会社キッドより許可を得て、
ゲーム画面を使用・掲載させていただいております。
これらの画像の無断転載を禁止します。

---------------

ゲーム紹介と感想

 『夢のつばさ』は、プレイステーション版が2000年9月28日(木)、ドリームキャスト版が2001年7月26日(木)に発売されました。高校2年生の主人公『深山直人』は、夏休みにULPと呼ばれる小型飛行機で空を飛ぶことを目指していたが、突然一人の女の子が直人の前に現れて…といったアドベンチャーゲームです。

 ちなみに、SCEJで検索すると見られたゲーム紹介では、メーカー名がKIDではなく『エレクトロニック・アーツ・スクウェア』となっていましたが、パッケージや説明書を読むと販売だけ請け負っているようです。最初はびっくりしました。

 それはさておき、これまでのKIDのゲーム同様遊びやすいシステムになっています。ドリームキャスト版では『Never7』にあった機能は全て採用されていて、以前の場面に戻ることができる『クイックロード』機能も用意されています。家庭用ゲーム機で遊んだアドベンチャーゲームでは一番ではないかと思いました。

 ゲームの舞台は、牧場と広大な草原が広がった高原地です。直人の家に居候する謎めいた押しが強い美少女『瑞雲しずく』と、いとこで実はナイスバディで幼なじみの『深山勇希』と、直人の3人を中心にして話が進んでいきます。

 成瀬ちさとさんが手掛けた絵と同様『暖かみのある』物語で、さわやかな雰囲気が心地よく感じられるゲームではないかと思います。ラベンダー畑や牧場など北海道を思わせる風景も雰囲気と合っていますし、楽しいイベントも多いです。

 が、どうしても『話の展開が読める』作りになっていまして『直人がよく切れる』ことと合わせて評判はあまりよくないようです。いずれも、私自身『たしかに…』と思いますし『トゥルーエンド』が一番かというと『?』だったりします。例えばプレイステーション版のマニュアル先頭の『プロローグ』に書かれている

でも、ただ1つわかっていることがある
私の心が完全に蝕まれた時
私のすべてが消滅する

という言葉を前面に押し出すだけでも違ったのでは…と思っています。この意味深な言葉の意味が『はっきりと』わかるのは終盤でして、惜しいと思う部分です。

 一方、後者については直人の父親がセスナ機で飛び立ったまま帰ってこなかった…ということが関係していると思っています。直人にとって未だに癒えない『傷痕』であり『空を飛ぶこと』とともに、一番つつかれたくない部分…と考えれば『理解』はできると思うのですが、どれだけ『共感』できるかは違う問題な気もします。

 でも、勇希シナリオは『素直になる』選択を続けていくと次第に関係が変化して…と巧く構成されていると思いますし、前半から中盤にかけての日常で見られるイベントも完成度は高く、感情移入しやすいと思っています。勇希が好みで、勇希の話だけでも見てみたい方でしたら、遊ぶ価値は十分あるかと。

 しずくシナリオにしても『不思議な力』を使った理由に直人が気付く場面は、直前に『それ以外の可能性』を否定できていて感情移入できましたし、後半に進むにつれて会話も軽妙になったり深い話題を投げられたりして興味深かったです。

 また、先日発売された『メモリーズオフ2nd』ではエンディングごとにスタッフロールの『シナリオ』担当の表示順が変化します。『一番上』が主に担当された方のようでして、とある話では『夢のつばさ』のシナリオの方が一番上に記載されています。本編でも劇中劇として用いられていまして、かかわりがあることは間違いないと思っています。

 残念ながら『主人公がちょっと…』という部分は引き継がれていますが、それ以外のイベントなどは『夢のつばさ』を思い出させる軽快さがあって、かなりいい感じでした。終盤『想い』をぶつける場面の鋭さも同じか、それ以上ではないかと。

 なお、しずくと勇希以外にも、直人を慕ってつきまとう後輩『白菊桜花』と、喫茶店でアルバイトする大学生『秋水志菜乃』が登場します。少なくとも一回はしずくか勇希のエンディングを見ないと専用のルートに入れないので要注意ですが、メインヒロインに負けない…と思われる展開が用意されています。

 志菜乃さんシナリオは『かなり重い話』ですし、違うゲームを思い出してしまう設定もありますが、直人が積極的にアタックをかける場面など見どころはあると思いますし『夢のつばさ』ではエンディングまでの過程が一番読めないため、私は先が気になる話でした。独特の『ていねいな言葉遣い』も魅力です。で、桜花シナリオについては…以下の『特設コーナー』で書くことにしたいと。

---------------

すごいよ!! 桜花ちゃん

 えーと…題名をこうするか迷ったのですが、以下のセリフに敬意を表して。全盛期のジャンプを毎週読んでいた世代としては、何回見ても笑ってしまいまして。

 それはさておき、桜花ちゃんは直人の親友『白菊疾風』の妹です。ゲームセンターで出会った直人を『運命の人』と信じ込んでしまい、それ以降つきまとうようになります。一つ上のゲーム画面は、勇希にライバル宣言する場面です。

 GAMERS EXPRESSの特集で、声をあてている倉田雅世さんが『ブレイクしている』とコメントしていましたが『その通り!』で、思い込んだら一直線、全てを自分に都合よく解釈する『台風娘』として話をひっかき回す…もとい、盛り上げます。

 ちなみに、志菜乃さんの『おまけシナリオ』で直人が(こ、このバカ兄妹がぁ……)と思う場面があるのですが、思わず同意してしまうほど『はじけた』言動だったりします。日本海軍関係のものが大好きだったり、ときどき自分で標語を作ったりなど『こゆい』…というか『お笑いキャラ』一歩手前の風格すら漂います。

 その一方で、かわいらしい外見に加えて、後輩っぽく『いじらしい』ところもあったりと『お約束』ではありますが、だんだん直人も意識するようになります。夏休みに入ると家に押しかけてきたりと、さらに積極的になってきたりします。

 が、後半になるとラブラブ(おまけシナリオから引用)な雰囲気から一変して、思わぬ方向に物語が進んでいきます。詳しくは書きませんが、私としては結構お気に入りな話だったりします。日付が大きく飛ぶことは、ご愛敬と思いますし。

 また、エンディングも言いたいことはありますが、それについてはアペンドシナリオの『メインヒロインへの道』で私の考えと全く同じことが書かれているので、はぶきたいと思います。ここまで共感できるアペンドシナリオは初めてで、ちょっとびっくりしました。桜花シナリオを見た方でしたら、読んでみる価値はあるかと。

 あと余談ですが、プレイステーション版ではグッドエンドを見るたび、タイトル画面でその女の子の声で『ゆめのつばさ!』としゃべるようになったり、イベントグラフィックを観賞するときに『運命の人、発見だよぉ!』といった題名を見られたりしたのですが、それらはドリームキャスト版に引き継がれず、少し惜しいと思いました。女の子ごとの『おまけシナリオ』で十分カバーできているとは思いますが。

---------------

戻る