Remember11 −the age of infinity−

【対応機種:プレイステーション2 ジャンル:アドベンチャー 発売元:KID】

 『サスペンス』アドベンチャーの言葉通りの展開が見られる作品ですが、それだけにインフィニティシリーズらしく『ない』と思える部分もあり、今回は『閉鎖環境』だけでなく現実のゲームを取り巻く『沈黙の螺旋』からの脱出を試みているように見えることも。

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ゲーム紹介と感想

 『Remember11』は、2004年3月18日(木)にプレイステーション2版が発売されました。旅客機の墜落事故に巻き込まれ、避難小屋で救助を待つことになる『冬川こころ』と、スフィアという施設の屋上から転落してしまった『優希堂悟』という、ふたりの主人公が繰り広げる物語を描いたアドベンチャーゲームです。

 パッケージ裏面に『「infinity/Never7」「Ever17」に続く第3の作品』と記載されている通り『インフィニティシリーズ』の新作として位置付けられています。序盤から緊張感が伝わってきますし[極限]を描き出す場面も見られますが、かならずしも過去の作品を予備知識としては要求しない作りになっています。

 これまで同様に遊びやすいシステムで、読み返しや聴き直しは全く問題ないですし、ちょっと手前からゲームを再開できる『Back Jump』機能や、クイックセーブにロックをかけられる機能にセーブファイルを編集できる機能と『かゆいところ』に全て手が届く完成度の高いゲームシステムとして仕上げられています。

 これらに加えて、本文や会話の中に含まれる『用語』の説明が読める『TIPS機能』も追加されています。トンキンハウスの『Lの季節』にも同じような機能がありましたが、本作も説明だけでなく、ちょっとした『仕掛け』が見られます。

 また、毎回キッドのオリジナル作品に参加されている阿保剛さんの音楽は雰囲気に合っていますし、サウンドコレクションのライナーノーツを眺めると題名一つを取っても深く考慮されていることが理解できます。そして『真っ白の太陽』という言葉で始まる、志倉千代丸さん作詞・作曲の主題歌も見事に調和したメロディラインですし[予言]をキーワードとした『little prophet』の歌詞も作品の世界観を適切に描き切っています。

 一方、シナリオは[時間]を主題の一つとし、複数の[視点]から展開される魅力ある物語ですが、わかりやすい『幸せな結末』ではないこともあって評価は割れています。私の印象では『サスペンスアドベンチャー』としては問題ない完成度でしたが、かつて圧倒された『Ever17』に引き続く作品としては素直に納得できないところもあります。

 ある意味[御伽]の世界が紡ぎ出す[結末]は状況の[反転]を描き出していますが、その前提となる物語の終盤は『登場人物の想い』の側面からは気になる部分でした。登場人物の見かけではない造形にしても『嫌い』と、はっきり書きたくなる要素があり、どうしても遊んでいるときに抵抗を感じました。

 また、一つの終末では誰かの[崩壊]を示そうとしたことは明らかですが、私の場合そこに至るまでの順序の関係もあって、片方には『そうでしょうね』としか思わなかった経緯もあります。この付近の描写も含めて『専門用語』を乗り越えても情報が十分とは考えられないような、かならずしも『親切ではない』叙述が数多く見受けられます。

 とはいえ、これまでのキッドのゲームと比較して『相対的に不親切』なだけであって、さまざまなところに補完するための『ヒント』はちりばめられています。複数の結末から獲得した情報に基づき[思考]を巡らせることは、少なくとも私には楽しい作業です。

 身体と精神の動きが[連続]していることを前提に[表現]の技巧を踏まえることで、かなりの部分を特定できると思っています。ただ、このような作り自体が過去見てきたインフィニティシリーズ『らしさ』かというと、たしかに私も首をかしげたくなる部分です。

 初回限定版に付属する設定資料集には、シナリオにかかわっていた中澤工さんと槻潮鋼さんからコメントがあり、それを読むと『中澤工さんの信念だけで槻潮鋼さんを押し切った』かのように取れるところがあります。これを前提に評価と関連付ける方も結構いるようですが、私としては槻潮鋼さんが参加されていないプレイステーション版『すべてがFになる』の追加シナリオも見てから判断してほしいと歯がゆく思います。

 でも、かつて二階堂黎人さんが主張されていた『ロジックよりもトリック、トリックよりもプロット』の言葉の通りで、物語には『論理』も『仕掛け』も必要ですが、結局は『物語』そのものが鍵を握ることは確実かと思います。たとえば今回グランドフィナーレという一種の呪縛からは解放されたわけで、来年らしきインフィニティシリーズの次回作に期待したいです。そして、ロジックとトリックの要素については…完全ネタばれ考察で。

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小説紹介

  1. 東京空港殺人事件
  2. すべてがFになる
  3. 時計館の殺人
  4. 夏と花火と私の死体
  5. 沙羅は和子の名を呼ぶ
  6. クール・キャンデー
  7. 聖アウスラ修道院の惨劇
  8. 木製の王子
  9. 私が彼を殺した
  10. 学校を出よう!2
  11. ローウェル城の密室
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