My Merry Maybe

【対応機種:プレイステーション2・ドリームキャスト ジャンル:アドベンチャー 発売元:KID】

 今回ともに紹介する前作から、いくつかのエンディングに深く気分を沈めさせられたシリーズですが、それでも印象に残っている理由の一つは『どうにもならない』宿命に向かい合う主人公やヒロインたちの、ひたむきな姿ではないかと。

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前作の紹介と感想

 前作『マイ・メリー・メイ』はドリームキャスト版が2002年4月25日(木)に、プレイステーション2版が2003年1月30日(木)に発売されています。津久見高校の阿見寮で暮らす高校2年生『渡良瀬恭介』に人工生命体の『レプリス』が届き、恭介は彼女を『レゥ』と名付けて起動させようとするが…と話が始まるアドベンチャーです。

 最初『ちょびっツ』から企画が考案されて『インフィニティ』の演技から松岡由貴さんが起用されたように思いましたし、前者は否定しにくい要素もありますが、かならずしも描かれる話が同じわけではなく、レゥと恭介を取り巻く登場人物たちの『人間模様』は遊んでみる価値はあると思います。そして後者は、現在となっては間違いなく適切な声優さんだったと感じています。

 また、ドリームキャスト版のシステムは『メモリーズオフ2nd』までと同様に遊びやすく作られています。一方、プレイステーション2版も一通り同じ機能を持ってはいますが、押すタイミングによってはボタンの反応がなかったり、セーブやロードのときに小さな画面を読み込む途中では十字キーで移動できなかったりなど『操作のしやすさ』という観点では違いがあり、ちょっと遊びにくく感じました。

 とはいえ、プレイステーション2版ではイベントグラフィックが追加されていたり、初回限定版には特典もあったりするため、遊んでいない方にお薦めするとき迷いますが、ちょっと関心があるという場合は手近に入手できる方かと。

 選択によって誰かの話へ進んでいく、ふつうの作りですが『インディアンポーカー』を遊べる場面もあったりして、トレーニングでは思わず熱くなってしまうこともありました。また、ちょっと遊んでみるとわかるのですが、レゥの無邪気かつ素直な『かわいさ』は無敵と思うくらい魅力で、かつ恋愛感情とも違う気がして、かなり印象深かったです。

 そして、レゥ以外の阿見寮の登場人物は『現実』を意識して描かれている雰囲気が見受けられ、私には『生々しい』とまで感じる描写も複数ありました。でも、だからこそ現在の世界には存在しない『人工生命体』が受け入れられる様子を、空想の作り話と切り捨てることなく読み進められた気がします。

 その一方で、繰り広げられる話は深刻な要素を含むことが多く、あまり好きではない展開もありましたが『ふたりが』自らの罪を受けとめて立ち向かう様子は、話によってキャストが変化して記憶に残りましたし、ゲーム以外の違うメディアでは表現しにくい『ふたつの』ラストシーンも含めて、できれば見てほしい気持ちも。

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本作の紹介と感想

 『マイ・メリー・メイビー』は、2003年4月24日(木)にプレイステーション2版が発売され2003年7月10日(木)にドリームキャスト版も発売されました。教育実習のため清天町を訪れた大学生『岸森浩人』が、レプリスの『レゥ』と突然出会ってともに3週間の生活を過ごしていくことになるが…と話が始まるアドベンチャーです。

 まず、これまでのキッドのゲームと違って『前作との関連』が深く、あらかじめ一通り前作を遊んでいないと楽しみにくくなっています。少なくとも、こちらを全て遊んでから前作へ逆順に進むことは絶対やめた方がいいかと。私が誰かに薦める場合、まずは一周だけ遊んでみて『自分にとっての名作』になりそうと感じたら、そこで一時停止して前作のエンディングを全て見てみるよう伝えると思います。

 ゲームシステムは、前作とは違ってプレイステーション2版でも遊びやすく、繰り返し遊ぶことも問題なくなっています。『Iris』で導入された、スキップやオートの速度変更も継承されていますし、ドリームキャストで熟成されたシステムと同じくらいの完成度に仕上げられています。イベントグラフィックも私には前作より綺麗に感じられましたし、同じキッドの『SDRプロジェクト』作品と同じ水準ではないかと。

 また今回は『Last game』という項目がタイトル画面の『Continue』に追加されまして、電源を切っても前回中断した場面から続けることができます。ちょっとしたことですが、途中でも翌日に持ちこすことが多い私には便利な機能でした。

 じっくりと日常が描かれる展開が中盤まで続きますが、最初からレゥによって変化をもたらされて始まる実習生活ですし、今回は曜日の感覚を持つことができたため私は前作より楽しく進めていけました。かりにそうでなくても、ひとたび物語が動き始めると『レゥ』を取り巻く事件の結末が気になるはずで、かなり引き込まれるのではないかと思っています。話によっては『続編』を実感できたりもします。

 今回は主人公の浩人が『教育実習生』ということもあり、授業以外でも生徒に対して教えたり校長先生から教わったりする場面が見られました。ひとによっては説教っぽく感じてしまうかもしれませんが、遊ぶ側に押しつけようとしている感じはないですし、達観したところがある浩人の言動とともに『考えてみる』ことも興味深いかと思います。

 この作品を遊んでいて、最初の何周かまでは『生命』という言葉がキーワードとして伝わってきたのですが、途中からは『宿命』の方が、より適格と思うようになりました。人工『生命』体であるレプリスが直面する問題と、前作でも登場人物が背負わされた『不運』を合わせ持った表現ですし、特に後者が『不運』や『不幸』といった言葉よりも適切ではないかと考えたからです。

 また『恋愛アドベンチャー』のジャンルが付けられていますが、私には『想い』よりも『信頼関係』が前面に見えるよう感じられました。いくつかの話では、人間とレプリスの関係が浮かび上がりまして、人間の『望む』まま言うことを聞くよう隷属させることには誰もが抵抗を感じるでしょうが、かといって『望まない』行動を取られても嬉しくはなく、レゥからは気付きにくかった『共存』という言葉の意味について考えさせられました。

 そして『心』と『記憶』にまつわる問題は、実は人間同士にもあてはまる部分が多い気がしますし、エンディングの一つ一つを『ありえる結論』として受けとめることもでき、できるだけ多くの人に浩人たちの選択を見届けてほしく思う作品です。

 とはいえレプリスの『ソフトウェア』に対する造形が、ちょっとあいまいに感じられたり物語の最も大切な部分で、技術的に飛躍しているよう見えたりしました。また、前作で気になっていた部分が判明した一方、その飛躍を含めて複数の謎が残されたため、このあたりは次回作で『なるほど』と思う展開が見られるのか気になってしまいます。

 もし実際に次回作が発売されるとしたら、前作の何年後かが舞台になって、とある女の子が再登場すると予想していたりします。実は私の予想は当たらないのですが、その結果を確認できる日を楽しみかつ気長に待ちたいと。

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